各種ブロック注射  後の  副作用 対策

桃子のつぶやき

各種ブロック注射後の副作用と対策!

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ネットで、調べたらブロック注射して、痛み、痺れが増す人は多いんですね。

私も何回かブロックしてから、ブロック前より痛くなったり、硬膜外ブロックでは、痛み強くて立てない時がありました。今考えたら、針による組織の損傷の痛みだったような気もします。 ↓↓のような各種ブロック注射後の副作用と対策が、ネットにありました。他人は考え過ぎではないの?見た目が元気なので、本当に痛み有るの?と心無い事まで言われる事がありますが、「日常損傷病学」のホームページを見て、私は間違っていない事がハッキリしただけでも、良かったです。ブロック注射後に、色々な副作用がある人は必見です。

 

日常損傷病学

各種ブロック注射後の副作用対策
はじめに、どんなブロック注射も針を刺す行為に違いなく、組織の損傷は必ず起こるものである。中には不可逆的で後遺症を残すものもありリスクはゼロではありえない。ブロック件数が増えるほど事故に遭遇する確率も高くなるわけであるから、ブロック治療を行うことがある医師は、ある程度事故を想定していなければならない。ここでは特に、とても軽微な(関節内注射なども含めた)ブロック後の副作用について述べる。なぜなら、軽微な副作用こそ知られておらず、それを無視して重大な事故につながっていく可能性があるからである。小さな副作用を見逃さず、対処することで大きな事故を防ぐことができる。

ブロックに共通の副作用

 

■1、出血:

 

細い針を用いることで注射後の出血はほとんど全てを防止することができる。ワーファリンを服用していても細い針であれば問題となることはほとんどない。出血が問題にならない細さとは26~27G針を示す。25Gはボーダーラインであり、25Gよりも太い針を使用する場合は常に出血を警戒しなければならない。27Gであれば血腫の心配はまずないといえる。出血は皮膚表面に出現した血の色で静脈性か動脈性か即座に判断がつく。動脈性の場合も27G針であればたいていすぐに止まるが、動脈性であれば3~5分ほど患者本人に出血点を押さえておいてもらったほうが無難である。やはり25G以上の太さの針の場合は警戒しておいたほうがよい。つまり、ワーファリン使用は患者が同意さえしていれば、医師がブロックを拒絶するべきではないと言いたい。

■2、刺入部からの感染

 

関節内、腱鞘内、トリガー、硬膜外ブロック、ルートブロックなどすべてのブロックを含め、皮膚消毒の手技の違い、注入薬の清潔度の違いなどは感染との直接の因果関係がないと結論する。もしも注射後に感染が起こるとすれば、その最大原因は注射に用いる針の太さと患者の免疫状態であると推測する。
どれほど消毒しても皮膚の汗腺に潜む細菌の殺菌は不可能であり、太い針ではそうした皮膚の奥の細菌を押し込んでしまうだろう。つまり皮膚表面の丁寧な消毒は、感染のリスクを上げることも下げることもないと結論付ける。それよりも、もっと感染のリスクを上げるのは18G針を用いた関節内穿刺と推測する。

■3、注射後の刺入部痛

 

皮肉ではあるが、患者がもっとも嫌がることなのに医師がもっとも無視するのが注射後に残る刺入部痛である。「注射は痛いに決まっているだろう」と大上段に構える医師が多いことがうかがえる。しかしこの刺入部痛の問題は実際の治療に大きな障壁となっている。
というのも刺入部痛を全く気遣いをしない医師が多いせいで、患者に注射のトラウマを作ってしまい、その後本気で注射で治そうとする医師が現れた時に患者が注射を嫌がるため治療に協力を得られないからである。実は我々のように本気でブロック注射で患者を治癒させてしまおうと考えている医師からすると、刺入部痛を気遣わない医師の存在は大変迷惑な話なのである。刺入部が痛いのは様々な要因があることをまず認識しなければならない。原因は一つや二つではない。

1、患者の年齢が若いほど刺入部痛が強い

 

まず痛みの侵害受容器は若いほど多く、高齢になるほど少なくなる。よって対象患者が若ければ若いほど刺入部痛が強くなる。

2、末梢神経を針先が直撃

 

注射時に患者が強く痛がる場合、おそらく細い末梢神経の侵害受容器を針先が直撃している。患者の顔が苦痛にゆがむのを無視してそのまま針を進めるのは絶対にやるべきではない。皮下、関節包、骨膜周囲には末梢神経の侵害受容器が密となっているので針がこれらの近傍を通る時、患者は強い痛みを感じる。侵害受容器を直撃した場合、患者は「これまで感じたことのないような強烈な痛み」を感じることになり患者は、医師に強い嫌悪感と不信感を抱き、以後の治療に大きな支障をきたす。

また、侵害受容器への直撃は、ある一定の確率で起こりうる事象なので注射回数が多くなれば必ず起こることを覚悟しておかなければならない。患者が再来院して注射を受けるかどうかを決めるのは「刺入部痛」が大きな比重を占めることを認識すべきである。つまり痛い注射であれば再来院しなくなり治療が中途半端に終わる。
侵害受容器を直撃した際の対策

私は必ず少量の局所麻酔を行いながら針先を進めている。それでも針先が末梢神経の受容器を直撃した際は一旦針を抜いて刺す方向をわずかに変える。さらにその位置で局所麻酔剤を少しばらまき、20秒程度待ってから針先を進める。これを面倒だと思うような心ない医師にならないことを節に望む。私はどんなに面倒だと思っても「患者に痛みを与えない」ことを最優先に考えている。末梢の小さな神経とあなどらない方がよい。小さな神経でも損傷すれば痛みを残すことにつながる。また、そうした小さな神経もきっちり避けることで大きな合併症というジョーカーを引く確率が下がる。

3、針による組織の損傷痛

 

関節内注射、各種ブロック注射で指標となるのは骨である。骨の形をたどって適所を探す。しかし、適所に針先が入らない時は骨膜や軟骨を傷つけることになり、これが注射後の持続的な痛みを引き起こすことがある。針による組織損傷の程度は針先の太さと比例する。細ければ損傷は少なく、太ければ損傷が大きい。組織損傷は感染の機会も作る。注射針は細くなるほど注射技術が難しくなるため、熟練しなければ細い針を使用できない。しかしながら細い針で熟練度を上げると、その恩恵は計り知れない。すべての注射リスクが著しく減少するからだ。注射技術が未熟な者ほど「針を細くしてもメリットなどない」と思い込もうとする傾向があるが、実際に細い針を使用すればメリットが多大であることに気づく。患者が痛がらないし、出血はほとんどないし、感染のリスクも組織損傷のリスクも下がる。よって困難は承知で細い針を使用していくよう自分を鍛えていくことを勧める。

4、Wind up現象

 

Wind up現象とは軽い痛み刺激を何度も繰り返すとゼンマイのねじを巻きあげるように徐々に痛みが強くなっていく現象である。厳密にはWind up現象とは少しことなるが、毎週同じ個所に注射をしていると、刺入部痛が強くなる現象がある。この現象を仮に「慢性Wind up現象」と名付けておく。
針刺入部位の痛覚閾値が低下していることは実際に確かめることは難しい。つまり同じ個所を刺せば刺すほど痛覚に過敏になる。「慢性Wind up現象」も副作用の一つである。原因としては刺入部に慢性の炎症が生じプロスタグランジンなどの疼痛伝達物質の濃度が局所的に上昇していると思われる。刺入部を1cmずらすだけでも痛みが弱まるので、刺入部を変えることをお勧めする。

5、視床痛

 

高齢になると視床が様々な原因で不調となり痛覚の制御が困難になることを考慮しておく。高齢では通常、痛覚受容体数が低下することにより、痛覚に鈍感になる。しかしながら痛覚に対し極めて過敏反応を示す高齢者を散見する。注射時の痛がり方が「普通ではない」強い痛がり方をする。この原因は現医学で解明されていないが、おそらく視床レベルでの痛覚制御(抑制)ができていないものと思われる。
しかしながら視床の器質的な異常を示すことができない現医学では、「器質的な痛みの証拠がない患者の強い痛がり方」=精神異常とする傾向が強く、理解されない場合が多い。視床痛の患者ではどんなに細い針を用いても、どんなにていねいに注射を行っても、おおげさな痛がり方を示す。しかしそういう患者を演技性人格障害者として扱ってはならない。できる限り痛みが来ないよう注射を工夫することを勧める。

 

■4、リバウンド現象

 

ブロック注射後一時的に痛みが消失し、その6時間から24時間の時間差の後に強い痛みが出現する現象。リバウンド痛の持続時間は約1日から場合によっては1週間程度のこともある。そしてリバウンド痛の消失後は劇的に症状が改善する傾向がある。リバウンド現象の定義は現医学に存在しない。病態生理も不明である。
しかしながらブロックを施行する者は必ず遭遇するので「不明」のままで済ませるわけにはいかない。
リバウンド現象は小さなものを含めると、おそらくブロック後の半数の患者に発生している。ただしリバウンド痛が強くない場合は問題にならず、患者も訴えないので認識されないだけである。トラブルになるのはリバウンド痛が強すぎて、数日から1週間生活に支障をきたす場合である。
リバウンド痛の必須項目として「その後痛みが著しく改善される」。
ただ、注意しなければならないのは、リバウンド現象はいわば「病気が治るための峠」であるが、その峠の痛みの強さがトラウマになる患者が少なくないということ。確かにリバウンドを通り越した後に改善した感があるが、再び「あの痛み」が来ると思うとブロックを受ける勇気が出なくなる。だからリバウンドの出現によって治療が中途半端に終わってしまうことがある。対策として、リバウンドが出現した際にさらに追加ブロックでリバウンドを抑えるのが望ましい。強いリバウンドが起こる患者は数%に満たないからだ。よってムンテラの有無は各医師にゆだねる。

■5、注射後、増強した痛み

 

注射後、「痛みが増強した」「症状が悪化した」と訴える患者は全国・全世界に多数存在する。それは治療した医師が想像している以上に存在する。なぜなら痛みを覚えた患者は来院しなくなるか我慢するかのどちらかの場合が多いからだ。
私は「他の医師が治せなかった疼痛」を専門として患者を診療しているので「他の医師が注射して、その後痛みが強くなった患者」の訴えを毎日毎日聞いている。よってその実態をかなり詳細に把握している。少なくとも「私が担当している患者」が他の医師にかかって注射を受けた場合、症状は治るどころか悪化する場合が多い。その理由は「私が担当する患者は極めて注射難易度の高い」患者ばかりであるからだ
注射後、痛みが悪化する理由は、刺入部痛、リバウンド、などをこれまで挙げたが、最大の理由は注射ミスと原因個所の診立て違いである(ミスへの対策は各論で述べる)。ここで最重要事項は、自分が犯してしまった注射ミスのせいで患者の容態が悪化した場合、それを素直に認めず「患者が痛がりであり精神異常であるからだ」などと自分を正当化しないことである。
局所麻酔剤の注射は痛みに関し必ず効果がある。よって効果がない場合は適所に薬剤が届いていないことを意味する。そのミスをことごとく全て認めることでしか注射技術が熟練していく道はない。悪化した場合は厳しく自分を責めるべきである。患者が患った一週間の痛みに対して詫びる気持ちを持ち、強く反省することである。私の周囲の医師でそれをしている者をかつて一度も見たことがないのは遺憾である。さて、注射ミスをすると医師が想像もつかない予期せぬことが起こる。それを以下に挙げる

 

1、姿勢の悪化により全身痛に発展

 

整形外科やペイン科に通院する患者の数割は中枢感作体質を持っていると推測する。

注射後の疼痛は防御姿勢をとらせてしまうことにより姿勢を悪化させ、神経根に持続性の緊張をもたらし、中枢感作を発生させる。これが「肩こりの注射をした後に全身が痛くなった」というような「医師が予期せぬ信じられないこと」を発生させる。
特に若い女性の場合はこのようなプシコチックな現象が生じやすい。痛みを誇張して周囲に示す方が有利に傾く機会が多いため、防御姿勢が若干誇張される。その防御姿勢が引き金となり中枢感作が起こり両上下肢に痛みが出現するのである。もちろん中枢感作体質のない者が防御姿勢をとっても痛みは出現しない。が、整形外科に若い年齢で来院する者は多かれ少なかれ脊椎に異常を持つ。よって本症例を医師として経験することは少なくない。

肩こりにトリガーポイント注射をした後に全身痛→医師を訴える構え、となる場合もある。こうなった場合、患者と医師の信頼関係はゼロなので、患者は治療を受けない。よって双方にわだかまりだけが残り不要な心労を背負うことになる。しかし、重要なことは注射ひとつで全身痛を生じさせることが「器質的に証明される事実として」存在することを知っておくことである。精神障害が原因ではない。私は現在、中枢感作を器質的に証明することを研究している途上である。

2、根反射や軸策反射の認識

 

Aという箇所に痛みが出現すると、その神経の支配領域の別のB箇所にも痛みが起こる現象がある。根反射や軸策反射などと言われているがこの仕組みがこうした異所性の痛みの原理の全てを語っているわけではない。異所性の痛みの詳細が判明するほど医学は進んでいない。しかもこれらの反射では分岐した別の神経領域Bに炎症まで引き起こす。Bには圧痛や熱感が存在するため筋肉炎や腱炎があると誤解されるが、真の原因はAで発生した痛みである。例を挙げると、テニス肘の痛みで来院した患者の肘にトリガーポイント注射をしたが、その夕方から手首の撓側に痛みと腫れが出現、というような場合である。このような症例が目の前で起こったとしても「軸策反射」ではなかろうかと空想できる医師はほとんどいないだろう。よって医師たちは「いいがかりをつけられた」と認識し、患者に憤りを覚えることになる。事実はAへの注射が引き金になっている。もちろん、誰に注射してもそうなるのではない。中枢感作が根底に存在している患者に痛い注射をしてしまったことが引き金であろう。中枢感作では火のないところに煙が立ちこもる。これらは現医学で解明されていないレベルの話であるから、信じる信じないは各医師に任せる。だが、信じなければこうした得体のしれない不定愁訴を治療することはできない。

3、注射刺入部痛の理解しがたい拡大

 

注射液が適所に入らないミスは医師たちが想像している以上に多い。ミスしてもそれを知る手段がないからだ。私はこれまで、注射ミスをゼロにするために、ミスを感知するための技術を磨いてきた(ここでは詳しくは述べない)。すると私も案外注射ミスをしていることを察知できるようになったミスを察知した場合、率直に患者に伝えリトライさせていただいている。だから私の外来では注射が適所に入らないことが極めて少ない。よって患者が注射後に病状が悪化するというケースがめったにないのである
例えば硬膜外ブロックでは黄色靭帯の外側に薬液が漏れてしまうと薬液が脊髄や神経根を圧迫してしまうことがある。この圧迫により神経根炎が発症し、同部位付近の腰痛を強く感じるようになることは十分にありうる。実際には刺入部痛+腰痛過敏であるが、患者は刺入部痛が広がったと認識する。このような薬液による神経圧迫→中枢感作→広範囲の痛み、は中枢感作体質ではしばしば起こることで珍しくない。
だが、一般的には重度の中枢感作体質の患者は普通の医師には手に負えない。患者自身がそれを察知し、治せない医師の元を去る。よって、数多くを経験することはない。。

■6、局麻中毒

 

局所麻酔剤やステロイド剤が静脈を経由して血管内に入ってしまうことはしばしばある。しかしブロックに使用する程度の薬剤の量で局量に達することはなく致命的なものはない。
患者によって「頭がボーっとする」「音が聞こえにくくなる」「酔ったような感じ」「目が回る」と訴える場合もあるので、その場合は薬剤が血管内に注入されている可能性を考慮して、針先の位置を変えるか、薬液を極端にゆっくり入れるなどの対処をするとよい。ちなみに仙骨裂孔硬膜外ブロックで局麻中毒が頻繁に起こる。血液の逆流がないことを確認し、静脈注射にはなっていないことが明らかな時にでも起こるから不思議である。
ただし、静脈注射になっていない場合でも脳に近い場所(頚部)に局麻剤を注入すると、数分以内に局麻中毒が現れることがある。患者は体の浮動感を覚え、目が回り、吐き気などを訴える。症状が酷い時は点滴などで対処するが、自律神経失調症がある患者でこのような現象が多いので要注意である。重要なことはいつ何時も注射液をゆっくり入れることである。ペインクリニックなどではスピーディさが要求されるため、ワンショットを十秒程度で行う医師もいるが望ましくない。

■7、神経損傷

 

まず神経損傷は使用する針の太さに比例する。私は頚部の神経ブロックには27G、腰部の神経ブロックには25G、硬膜外ブロックにも25Gを使用している。可能な限り細い針を用いることで神経損傷を防ぐことができる。
次に重要なことは、そろそろ針が目標点に到達する深度であると感じたら、極めてゆっくり針を進めることである。デリケートに進めれば針先が神経に触れると患者の反応でわかるので深く突き刺すことはない。ところが「刺す時は素早く刺して、抜く時はゆっくり」というような手技を勧めていることが「麻酔科診察プラクティス12ペインクリニックに必要な局所解剖」に書いてあった。驚きを隠せない
もう一つ重要なことは、たとえ硬膜外に針先がきっちり届いていた場合でも、脊柱管狭窄がある場合、注入した薬液の圧力が馬尾神経を圧挫することがあることをしっかり認識しておくことである。薬液を注入した際、注入圧で患者が痛がる場合がある。この場合圧挫が起こっている可能性が高い。
患者が痛がるにもかかわらず「ちょっと辛抱してください」と言って注入すると、それが知覚異常という後遺症を残すことがある。患者が注入液によって痛みを強く訴える場合は、必ず刺入点を変更しなければならない。せっかく苦労して硬膜外に入れた針を、再びやり直して他の椎間からブロックすることにはとても勇気がいることである。時間と労力が倍かかり、2度目のブロックがうまくいくという保証もない。だからやり直すには莫大な決意が必要になる。しかしその勇気を出さなかったばかりに、患者に「しびれ」という後遺症を作ることがある。勇気と決断が医師にとってどれほど重要かということである
高齢者の脊柱管はストライクゾーンが極めて狭くなる。よってストライクゾーンをたやすく外す。外すと針が神経根を射ぬいてしまうことがある。患者がびくっと動いたら、神経根を刺した可能性が高い。深く刺しすぎた際に起こりやすいので要注意である。

■8、硬膜穿破

 

医師の間で俗にいうタップである。硬膜に穴を開けてしまったという意味である。通常は硬膜外に薬液を注入するが、硬膜穿破しているとクモ膜に達し、脊髄麻酔となる。脊髄麻酔はさめてしまえば後遺症は残らないので目立った副作用はないように思われるがそうではない。

1、急性循環不全ショック

 

もっとも緊急を要するのは末梢血管が拡張して血圧が低下して急性循環不全を起こしショック状態となることである。高齢者では致命的であり、実際に全国ではこれで死亡させたケースを散見するがマスコミに報道されることはほぼない。よって水面下にそれなりの死亡件数が存在している。
腰部硬膜外ブロックの場合、トータルの注入量が、たとえば1%キシロカインで3cc以内であれば麻酔範囲が下半身にとどまり、重篤になることはまずない。しかし、硬膜外ブロックを効果的に用いるためには量を増やさなければならないため(私の場合、腰部硬膜外ブロックでは0.5%キシロカイン10cc)全てが硬膜内に注入されると血圧低下が起こる。マーカインを使用していると薬剤が代謝されにくく、その影響はキシロカインよりも長時間にわたる。また、高齢者の場合、新疾患を合併している場合、急な循環不全が不整脈を生じさせ、血圧が急降下することもある。よって硬膜穿破を自分の命に代えても起こさないという決意が必要である。これをおおげさだと思うようなら、ブロックを行うことをその医師には勧めない。私は「もしかして硬膜穿破しているかなあ」と少しでも疑った場合、注入スピードを極端に落とし、患者に様態の変化がないかどうかをききながら時間をかけて行う。また、ためらうことなく中止する勇気も必要になる。「このひと押しに命がかかっている」と自分にいいきかせて慎重に行うようにしている。ちなみに硬膜穿破して脊髄麻酔になってしまうと、患者は灼熱感を覚える。それはまるで熱いお風呂に入っているかのようと形容される。患者が「ぽかぽかします」と医師に告げた時は警戒することである。

2、脊髄麻酔後の肩こり腰痛

 

誰も考えもしない副作用がある。それは硬膜穿破すると強い肩こりや背部痛、腰痛を生じさせるということ。賢明な医師であれば気づいている方もいると思うが、脊髄麻酔に万一なってしまったら、全脊椎麻酔にならないように枕を高くして頭を持ち上げる。そして下肢は挙上する。この体勢のために脊椎が過屈曲の状態になる。そして麻酔が効いている2時間程度、その状態を少しも動かさないでいると…どうなるか。
脊髄が過屈曲になると脊髄は引き伸ばされる。それが短時間ならよいが2時間もその状態でいると脊髄炎や神経根炎などを引き起こし、中枢感作の状態となる。実はこの後遺症が患者にとって苦痛で、医師を恨みたくなる。
もともと脊椎が悪いからブロックを行っている。よって脊椎・脊髄は普通の人よりも易損性である。そこに過屈曲2時間!さらに、麻酔のかかった下半身では寝返りもできないため静脈血栓ができてしまう。人工的なエコノミー症候群である。そこから派生する脳梗塞や心筋梗塞もありうる。踵など、当たり所が悪ければ皮膚や皮下に炎症も起こる。よって、硬膜穿破して脊髄麻酔になってしまったときは、こまめに態勢を変え、脊椎が過屈曲にならない工夫をしなければならないのである。それをしておかなければ次回から患者に不信感を持たれ、「ブロックは危険だ」と外来患者にふれ回られることになる。訴訟になることもある。

3、髄液漏出による頭痛

 

私は25Gカテラン針を用いているが、細い針を使用すれば防ぐことができると思われる。

4、仙骨部硬膜外ブロックでの硬膜穿破

 

仙骨部硬膜外ブロック(コーダルブロック)で硬膜穿破の可能性があることを知らない医師が意外と多い。硬膜管の終端は個人差が激しく、L5/S1で終わる者もいればS2/3で終わる者もいる。コーダルブロックの刺入部である仙骨角は通常S4/5の位置にあるが、潜在性二分脊椎がある者では仙髄が仙骨で覆われていない者も存在し、仙骨角の位置が不明瞭である。そのため、長めのカテラン針を用いてブロックを行うと硬膜穿破することがあることを認識しておいた方がいい。硬膜穿破をすると失禁が起こる場合がある。失禁は後遺症ではないが、患者はブロックにトラウマを持ち、その後の治療に支障が出る

■9、硬膜外血腫

 

硬膜外血腫は使用する針の太さによりそのリスクが変わる。太めの硬膜外針を用いれば、血管損傷はまず起こる。硬膜外腔には静脈叢があり血管がはりめぐらされ、さらに静脈圧よりも外腔の圧が低いので出血は止まりにくい可能性がある。よってブロックをする際は可能な限り細い針を使うことが望ましい。ただし硬膜外腔は陰圧であると信じられているがそうではない。高齢になり脊椎が短縮すると硬膜管がだぶつき、さらに黄色靭帯の肥厚、脊柱管の狭窄のために陰圧ではいられない。硬膜外腔=陰圧という思い込みは危険である。ただし、硬膜外腔が陽圧であると陰圧であるよりも出血は止まりやすいと思われ、高齢者の場合は硬膜外血腫は起こりにくいと思われる。
すなわち、ブロックの際の血管損傷は偶然で起こるものではなく、狙った場所に針先が行かず、針先を抜き差しして探る行為で起こりやすくなると思われる。つまり、血管損傷はブロック技術の未熟さと直結している。よって、太い針を使用し、経験が豊富でない医師が硬膜外ブロックを行えば、出血させる確率が高いと思われるので注意が必要である。特にコーダルブロックでは注射技術の影響が大きい(コーダルは硬膜管に対して平行に針を進めるため静脈にぶつかる可能性がきわめて高い)。

■気胸

 

下部頸椎、胸椎の近傍に針を刺入する際に肺を刺してしまうことで発症する。たいていは針を刺した際に患者が咳をするので明確にわかる。針の太さが25G以上であれば気胸は起こり得る。それ以下であれば肺を刺してもまず起こらない。よって鍼灸師が細い針で肺を刺したとしても、気胸に発展することは少ない。ほとんどの気胸は自然治癒するものなので患者にはその旨を伝えておくほうがよい。もしも刺入時に患者が咳ををしたら、その数時間後に胸部のXP撮影をしておくことを勧める。直後では気胸は起こらない。

■最後に

 

医師であれば治療成績を実績とし、リスクのことについて触れたがらないが、患者側の立場で医道を進むなら、もっとも大切なことは万一にも事故がないことである。
医道が採算を求めてはならない。それはきれいごとであるが、一流を目指すならきれいごとを追求することも楽しいものである。よってスピードやブロック件数、治療成績などを上げることよりも、リスクを低下させることに執心していただきたい。幸いなことに、リスクを低下させることが、医師の場合、治療成績を向上させることと直結する。ブロックは件数を重ねるほどに腕が上がる。だが、何も考えずに件数だけを重ねていては極めることはできない。常にリスク低下を考える、常に創意工夫をする。そうしていれば医師の誰もがブロックの達人に必ずなれる。そして実際に、多くの悩める患者を、他の医師が治療できなかった患者を、腕一本で治せるようになる。副作用やリスクについて解説したものである。転ばぬ先に杖をつくための一助にしてほしい。

 

 

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